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2006年11月25日

黄昏の浜辺で

釣り竿を握り沖を見つめたまま、おいやん(紀州方言でおじさんの意)はつぶやきました。

「ほんまに魚おらんようになったなあ・・。」
「三十年前やったら、この浜で地引き網したら魚の重みで網破れるくらい(魚が)入ってんけどなあ。」
「今はこの浜でも網引く漁師ちゅうたら、よったり(四人)しかおらんでえ。」
「毎年、ちょっとずつ浜も減って(面積が減少して)いくしなあ。」
「反対に川は浅うなるばっかりやし。」
「ほいでなあ、ここらの磯も草(海草)生えんようになったわ。」
「ほら魚も棲めんわなあ。」

そんなおいやんの話に耳を傾けながら沖のウキに目を移すと、海面には小さなイワシが群れて跳ねるのが見えます。 ハマチに追われてこの海岸に逃げ込んでいるとのことでした。 十日位前までは浜からハマチが釣れていたそうです。でもここ数日はダメとのこと。
話を聞かせてもらったオジサンは地元の方で、よくこの浜で釣りをされているそうな。となりに座って相づちを打つ私に、この浜の移り変わりの様子を語ってくれました。 私もこの浜の景色とのどかな佇まいが大好きで、近くまで来た時には必ず立ち寄る処です。 

確かにおいやんの言うとおり、形のいい小石でおおわれたこの浜の姿が、訪れる度に少しずつ変わっているのは私にも解ります。最近、地球温暖化に警鐘を打つ内容の本「ガイヤの復讐」(ジェームズ・ラブロック著 中央公論新社刊)を読み終えたばかりなので、余計にそんなおいやんのつぶやきのひとつひとつが、重くのしかかってくるようです。(私は偉い人の理論に感化されやすいところがある)
獲物あっての猟、魚あっての漁や釣り、いやいやそれ以前に地球あっての我々生き物やからなあ。
地球の調節機能も限界か?とつりえさ屋の私もつぶやくのでした。

※写真の場所は白浜町富田(とんだ)の浜。おいやんの使っていた釣り餌はアミエビをコマセに、ボイルオキアミを付け餌に。


2006年11月15日

命あっての釣りだから

DSCN1493.jpg

穏やかな日が続いた今年の秋ですが、先週あたりから特に日本海側を中心に冬めいてきました。これまで平穏すぎた反動か、北海道で竜巻が起きたのをはじめ、各地で突風や急な雷雨のニュースが聞かれます。先週末は金曜夜に寒冷前線が南下し、時間差はあれど近畿、四国方面は日付が変わった頃に一時大荒れの天候となりました。

そんな中、淡路島に釣行してたのが、先日カレイを釣ったよと知らせてきた大阪の知人です。その日の彼は、夜10時過ぎに淡路の南淡方面に到着し夜明けに渡船のない一文字にゴムボートで渡るというプラン。既に雨がパラパラ落ちていた中、ボートを先に膨らませておき、朝に備えて無事就寝。しかし2時間ほど寝た3時前に凄まじい雨音と雷で目が覚めたそうです。しばらく経って、今度は車の傍に置いてあったゴムボートが突風で舞い上がり、あっと言う間に数十メートル飛ばされたのでした。慌てて押えに行くべきところでしたが、ボートには即時に水が溜まり、それが重石になってそれ以上飛ばされずひと安心。

明け方には風雨もおさまり、一文字へ渡ろうとすると、ボートの中には水がヒタヒタ・・・。そう、飛ばされた時の衝撃で底のシートが裂けていたのです。(写真がその裂け目。本人が送ってきました)
ただ空気室が傷んだのではないことから、その日の往復には利用したそうですが、帰りは若干裂け目が広がり、荷物も水浸しになったとか。

今回の釣行、彼曰く

「ひとことで言えば、嫁さんが見たら“絶対やめて~っ!!”って言うような天気とボートの状態やったかな」と。

やっぱり、無理はいけません。釣果もいくらかあったそうですが、それは二の次。
私より少し若い彼。今度会ったらお灸をすえてやるつもりです。

2006年11月07日

紀州田辺、秋の磯では・・・

いきなりで何ですが、この魚を煮た後の煮こごりの風味は、数ある魚の煮こごりの中でも格別だと、私は思っております。 そりゃあ他人様にはそれぞれの嗜好や、ご意見やらがお有りかと存知ますが、私と同じ思いを抱いている人は、特にこの紀南地方では少数派ではないと思っています。 寒い冬の朝、熱い炊きたてのご飯の上にこの煮こごりをのせて、かき込むように食べて学校へ行った子供の頃を思い出します。

しょっぱなから煮こごりがどうのこうのと、どうもいびつな文章になってしまいましたが、この魚の正体は上の写真にある「ブダイ」のことでして、私ども紀州南部の者は「イガミ」という当地名で呼んでおります。当地では昔からお正月や、秋の祭りなどの晴れの日の食膳には欠くことのできない魚なのです。(その起源や理由は知りませんが・・) なので、「イガミ」は世間一般にいう高級魚などではありませんが、我々紀南人にとっては特別な魚なんですねえ。
当然、釣りシーズン真っ盛りの今、紀南地方のあちらこちらの磯の上では、「イガミ」狙いの釣り人達が一人で竿を二本も三本も操りながらお正月用のものを確保しようと大変な賑わいを見せています。 このイガミ釣りはもともと紀南の田辺市を中心としたごく小さなエリアの中だけで行われていたのですが、最近では場荒れのしていない他の磯にも、さらなる大物を求めて釣行する人もいます。そんな訳で、これほど地元の釣り人を熱狂的にさせる「イガミ」なる魚とそのおいしさを皆さんにも紹介したかったのです。
「おいしい魚だから自分で釣って食べたい。」イガミ釣りには、本来釣りという遊びがもつ原始的で且つ本能を満足させる、そんなシンプルな魅力があるから、多くの根強い愛好者がいるのではと私は考えるのす。 
あっ、そうそうさっきから煮こごりのことばかり書いてしまいましたが、もちろんイガミの身そのものも、身離れのいい白身で甘辛く煮付けると、それはそれは美味しゅうございます。ただし、この魚を初めて料理される方は、丁寧に内臓を取り出さないとあとの身が非常に臭くなりますからご注意を。 本当に臭いから。