曼珠沙華
その登場の仕方には、毎年、毎年感心するのですが、ちょうど今時分、まだ残暑でぼんやりした頭を、ハッと我に返らせてくれる様に姿を現す曼珠沙華。ご存知、彼岸花のことですが、私の記憶に誤りが無ければ秋のお彼岸の数日前には、まるで時を計ったかのように可憐で繊細な赤い花弁を田や畑の緑のなかに現し、目を楽しませてくれます。
この花は花が終わってから葉が出てくるので、その点でも興味深いのですが、その世間での扱われ方というか、とらえられ方は一様ではなく、たとえば先に私などはそれを楽しむなどと書いたものの、人によっては「死人花(しびとばな)」などと呼んで忌み嫌う、誠に不憫な花でもあります。 たまたま仏事である彼岸の頃に花開くために、死者を連想させるような暗い印象を植え付けられたのでしょう。この花には何の罪も悪気もないのに・・。
いや悪気がないどころか、この花は遠い昔、飢饉などで食物が底をついた時のための最後の食料として、半ば人の手によって身近な場所に植えられた歴史があるのです。ちなみに日本にある彼岸花は雌株(めかぶ)ばかりで雄株(おかぶ)のほうは日本の酸性土壌に適応しなかったと、前に本で読んだことがあります。 私も子供の頃、彼岸花には毒が有るから触るなと教わりました。確かにこの花の球根にはアルカロイド性の毒が含まれているのですが、それを水で晒すことによって無毒化させデンプン質を食すことができるそうです。だからわざと不吉なイメージを与えて、非常時の食料として温存しておく為に、普段安易に人が手を出さないように仕向たのでしょう。 ここにも日本の先人達のすばらしい智恵を感じ取ることが出来ます。
尚、ついでというか、突然話は変わりますが、私ども釣り餌屋もこの花を見るころから、仕事に活気が出てまいります。 以上、おわり。
※写真の彼岸花は9月14日に撮影。じつにやさしい佇まいです。